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2025.10.22
ハチ公
忠犬ハチ公と上野博士 -ひたむきな愛情が遺したもの-

渋谷駅のハチ公像の前を通ると、ふと足を止めてしまいます。
それは、ただの待ち合わせの目印ではなく、一途な愛情と絆の物語を伝える場所だからかもしれません。
とある秋田犬は1923年、秋田県大館市で生まれました。
東京帝国大学農学部教授・上野英三郎博士のもとに引き取られた子犬は「ハチ」と名付けられました。

博士は、日本の農業工学の基盤を築いた人物であり、農村の未来を思い描いた情熱の人。
そして同時に、静かな優しさを持つ動物愛好家でもありました。
研究に向かう忙しい日々の中でも、ハチと過ごす時間は博士にとって心の潤いでした。
そしてハチは毎朝、博士を渋谷駅まで送り、夕方には改札口で帰りを待ちました。
博士の姿を見つけると、小さな尻尾を揺らし、真っ直ぐな瞳で見上げました。
その光景を思い浮かべると、胸が温かくなります。

しかし1925年、博士は講義中に急逝します。
突然の別れを理解できぬまま、ハチはその後も駅で博士の帰りを待ち続けました。
雨の日も雪の日も、都会の雑踏の中で――。
やがてその姿は人々の胸を打ち、「忠犬ハチ公物語」として日本全国、のちに世界へ広がっていきます。
そんなハチも1935年、11歳でその生涯を閉じました。
しかし彼の一途な想いは、博士と共に今も人々の記憶の中に生き続けています。
渋谷駅だけではありません。大館市や東京大学のキャンパスにも、博士とハチが寄り添う銅像があります。まるで「おかえり」「ただいま」と声を掛け合うかのように、互いの姿を見つめ合うその像を前にすると、思わず胸が熱くなります。
ハチが伝えてくれるのは、動物と人との関係を超えた「信じる心の強さ」。
そして博士が遺した学問の功績と、愛情に満ちた日々の記憶があってこそ。
ハチと上野博士2人の物語は、現代においても輝き続けています。






